アニマルフリーへの転換期
々はなぜおしゃれをしたいのか。
私たちにはひとりひとりの個性があり、それを服装で表現する自由があるからではないだろうか。
そこには自己主張であったり、承認欲求であったり、セックスアピールとして各々好みのデザインを纏う。
ファッションとはその人の内面を映し出すもうひとつの自分と言えるのかもしれない。
そんな誰の生活とも密接なファッションの分野では大きな変化が起きている。そう、リアルファー(毛皮)の需要激減といううれしい変化である。
動物を思いやる多くの方々の熱い啓発と、アパレル企業へ声を届け続けていただいた努力の賜物に他ならない。
毛皮輸入量は2006年のピーク時に比べ9割以上削減された、10年前には考えられなかった「ファーフリーなど当たり前」が実現したのだ。
筆者の住んでいる地域でも2023年11月時点でショッピングセンターの服屋さんを見渡す限りではリアルファーの取り扱いは見当たらず、ファーフリー運動の大きなうねりを実感する。
それでも、2022年時点の日本人による毛皮動物犠牲数は約40万頭にも及ぶ。これまでどれほど気の遠くなる犠牲数であったのかが窺え、重く受け止めなければならない。
一部アパレル企業は消費者の毛皮離れに伴い、毛皮の毛だけを使いファーウール(ラクーンウールやフォックスウールなど)を使ったセーターやカーディガンなどの販売を始めた。
リアルファーの生産過程にショックを受けて購入を拒んだ消費者に対し、毛皮だとわからない形で全く同じ動物の苦痛が伴っている商品を供給するこの企業態度。
はっきり言ってこのような企業にSDGsやサスティナビリティといったエシカルを掲げる資格は皆無である。こんなことでは一体どこに社会問題と向き合っている姿勢を感じればよいのかと。
命ある動物への福祉や倫理、生産過程における公害、なめし工場での健康被害、環境汚染、人獣共通感染症の助長、安全性(東京都の調査でもファー製品から基準値を超えるホルムアルデヒドが検出されている)と、リアルファーやファーウールに限らず企業の社会的責任において動物性素材は相反するものなのだという自覚を今一度見直していただきたい。
そして私たちはこのような大きな変化と共にファーフリー運動からアニマルフリー(脱動物性素材)運動へと転換期を迎えました。
これからはリアルファー廃止、ファーウール廃止と同時に、動物性素材全体にも目を向ける時流、ご時世ですよという声も届けていきましょう。
どんなブランドがどの素材を廃止しているのか、以下を意見の参考にしていただけると幸いです。
エキゾチックレザーフリーブランド
※エキゾチックレザーとは牛、豚、馬、羊など広く経済利用されている家畜動物の一般レザーに対し、鳥類、魚類、爬虫類など一般的ではない部類のレザー)
ファーストリテイリング(リアルファーも廃止済み)
「ファーストリテイリングは、クロコダイル、アリゲーター、ヘビ、トカゲ、オストリッチ、カンガルー、クジラ、サメなどのエキゾチックアニマルや野生動物由来のレザー、スキンの使用を禁止しています。また、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)および国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに掲載されている動物は使用しません。動物の胎児のレザー、スキンは使用しません。」
としており、エキゾチックレザーの使用を禁止している。
シャネル(リアルファーも廃止済み)
廃止理由
継続的に自社サプライチェーンを見直し健全性、トレーサビリティに関する自社基準を満たすよう努力。倫理基準に合致する形でエキゾチックレザーを調達することがますます困難になっている。
今後はアグリフード業界が作り出すテキスタイルやレザーの研究開発に注力。すでにツイード(毛織物)も本物ではなくコピーされにくい刺繡で代替している。
「エキゾチックレザー製品は求められたので作ったがそもそもシャネルのビジネスではない」
バーバリー(リアルファーも廃止済み)
廃止理由
サスティナビリティ強化の一環
備考
2025年までの目標は主要素材の完全なトレーサビリティ保証、100%認証されたウール、再生ナイロン・ポリエステル使用の徹底。
2040年までにCO2排出量を削減量が上回るクライメートポジティブ達成を宣言。
マルベリー(リアルファーも廃止済み)
廃止理由
アニマルウェルフェアだけではなく環境に与える影響という点でも懸念。レザーは食品産業の生産過程で出る副産物に限る。
注意:一般レザーが環境に与える影響も大きい
ヒューゴボス(リアルファーも廃止済み)
ヴィクトリアベッカム(リアルファーも廃止済み)
3.1フィリップリム(リアルファーも廃止済み)
英百貨店セルフリッジ(リアルファーは販売停止)
~大手ブランドのエキゾチックレザーに対する取り組み~
(基準はあるが取り扱い継続)
ケリング
(グッチ、バレンシアガ、アレキサンダーマックイーン、サンローラン、ボッテガヴェネタなど)
種ごとに細かなアニマルウェルフェア規定を設けサプライヤーにも完全なトレーサビリティの確保を義務付け。絶滅の恐れがある種についてもたとえ合法な取引であっても調達禁止。
LVMH
(ルイヴィトン、クリスチャンディオール、ジバンシー、フェンディなど)
2019年に責任あるクロコダイルの調達方法について独自基準を定めた。
多種多様な素材のバリエーションがあるアパレル製品づくりにおいて同業他社が廃止にしている素材にわざわざ規定や基準を設け使用を続けることは果たしてブランド価値を高めることにつながるのだろうか。
これまでリアルファー問題でファッション業界の倫理観が鋭く問われてきたわけであるが、「エキゾチックレザーフリーはファーフリーに続くムーブメントに」と注目されだした今日において、この執着に消費者はどのような反応を示すのか。
人々がエシカルの必要性に目を向ける時代になった今、アパレル企業に求められるのは潔さだといえよう。
エキゾチックレザー生産過程の残酷性はYouTubeなどで検索してみてください。
例:クロコダイルレザー(ワニの革)、リザードレザー(トカゲの革)、パイソンレザー(蛇の革)、オーストリッチ(鳥類最大と言われているダチョウの革)
ワニでは劣悪な飼育環境、汚れた水、体長より小さな檻に詰め込むなどの行いがされています。
アンゴラフリーブランド
ファーストリテイリング、シャネル、グッチ、プラダ、ラングラー、ディッキーズ、リーフ、ナパピリ、Kipling、GUESS、Jansport、Lee、Eastpak、VANS、Red kap、ティンバーランド、ZARA、ノースフェイス、GAP、ステラマッカートニー、カルバンクライン、ラルフローレン、H&M、DearElsaなど
WWDの2018年時点の情報では330ブランドがアンゴラフリーであるとのことだった。
ウールフリーブランド
ヴァレンティノ(アルパカ)
ユニクロ(アルパカ)
エスプリ(アルパカ)
マークス&スペンサー(アルパカ)
GAP(アルパカ)
H&M(アルパカ)
モヘアフリーブランド
ファーストリテイリング(ユニクロ等全7ブランド)
フルラ
アルカディアグループ
H&M
インディテックスグループ(ZARA[など)
GAP
フォーエバー21
アディダス
カシミヤフリーブランド
ヴィクトリアズシークレット
ASOS
コロンビアスポーツウェア
オーバーストック
ウール分野は全体的ではなく一部の種は廃止にするという性格を有している。一律廃止であるファーやエキゾチックに比較するとウール分野に関しては廃止差別をしないでほしいという気持ちは否めない。
アルパカの毛刈りも羊やヤギと変わらない問題性を秘めている。よい流れではあるがここからウールフリーへのハードルの高さが垣間見え、意見の際は特に力を入れなければならない部分になる。
また参考までにウールは扱っているがノンミュールシング(羊の臀部切り取りをしていない)ブランドもあり、無印良品、GAP、ヒューゴボス、アバクロ、ティンバーランド、ジョルダーノなどがこれに該当する。
アニマルフリーブランド
こうして見ていくと動物性を使用しないブランドが今は異彩を放っているように見える。しかし皆が残酷極まりないリアルファーから離れていったように、同じく残酷極まりないこれらの素材からも離れていく日が必ず来る。
これまではリアルファーが動物性マテリアルにおける動物問題の代表格であったが、これからは全ての動物性マテリアルが代表格となる。私たちひとりひとりの声でアパレル企業のアニマルフリー化を加速させていこう。
追記
今回はレザー廃止ブランドを見つけることができませんでしたが、強いて言えばガニーというブランドがバージンレザー(新たに生産された皮革)の使用を廃止されていました。つまりリサイクルされたレザーは使用しているということになります。ステラマッカートニーなどもバージンカシミヤを使わないといった取り組みをされています。ベターではあるものの、リサイクル動物性素材の使用はアニマルフリーには該当しません。