毛皮(リアルファー)に対する生活者の態度に関する意識調査 2014年
NPO法人アニマルライツセンターは、毛皮(リアルファー)に対する生活者の態度に関する意識調査を実施し、日本の生活者の毛皮の消費行動および意識の傾向を調査しました。
調査サマリー
積極的に毛皮の利用を望む生活者は非常に少ない。
女性、若い人のほうが、より毛皮を利用したくないと考える傾向が強い。
ファストファッションを購入する機会が多い人のほうが毛皮を拒否する傾向にある。
フェイクファーとの見分けがつかない人が多い。
調査の背景
毛皮はかつての需要と異なり、先進国では防寒としてはほぼ利用されなくなっています。また、「高級」「高価」というイメージが持たれていましたが、中国での量産化に伴い、価格が低下し、高級素材ではなくなり、安価な衣類や小物に利用されることが多くなっています。
2014年9月にフィンランドとデンマークで行われた毛皮オークションの報告によると、ミンクの毛皮の価格が2013年と比較して急激に下落。デンマークのコペンハーゲンFur(オークション)の売上高も40%下落、直近のフィンランドSaga Fursオークションでもミンクの毛皮の平均価格が55%も下落しました。
また、各地で毛皮の需要が落ち込んでいることが確認されています。このところ所用が非常に高くなっていた中国では、総毛皮のコートなどの高額商品は、反汚職(毛皮のコートを贈答することが多かった)及び動物福祉運動などが広く普及してた事を受け、中国の毛皮市場も急激に減退してきていると報告を受けています。
日本においても、ここ10年の間に大きな変化がありました。国内での毛皮養殖は新潟県の1件(法律に適応していない施設として現在行政指導を受けている)を残し、廃業しました。さらに、素材としての毛皮の輸入は、2006年の223,223点(114,140Kg)であったのに対し、2013年は49,615点(24,796Kg)と、78%(点数・Kg)減少しています。主に中国から輸入される毛皮付き衣料についても、点数36%減少、Kgでは48%減少しました。
※毛皮輸入量の推移
毛皮が動物福祉的に問題のある製品であるとして、世界的に毛皮反対運動が活発に行われています。毛皮動物の飼育禁止については、現在、欧州の多くの国で議論されているトピックスであり、中国では毛皮を使わない企業を集めたファッションショーも開かれました。日本では、私たちも2005年に毛皮反対キャンペーンをスタートさせており、以降着実に全国に広がりを見せています。毛皮が中国を始めとした環境汚染にも多大な悪影響を及ぼしていることも明らかになりつつあり(癌の村等)、毛皮に反対する運動は今後さらに拡大すると予測しています。
このような状況を受け、毛皮を廃止する企業も徐々に増加しており、2014年にはZARAを持つインディテックスグループが毛皮反対を表明、日本でもユニクロや無印良品などがすでに毛皮を廃止しています。
一方、日本の毛皮業界では、専門学校に向けた毛皮の講習会を開くなど、毛皮の普及活動が行われています。また、世界の毛皮の流通量は中国での毛皮バブルに伴い増加してきました。しかし、2014年4月、中国での需要が落ちてきていることと、中国での排出薬剤の規制が改善されたことも受け、今後の生産量には変化が生じる可能性もあると考えられます。
調査概要
一般調査会社での調査
調査機関:2014年9月24日~9月26日
調査対象:一般調査会社の登録パネルを利用 18歳~39歳 男女 1,000名
調査方法:スマートフォンを利用したWEB調査
実施主体:NPO法人アニマルライツセンター
※この調査において、「毛皮」とはリアルファーを指す
※回答への影響を考慮し、画像は利用していない
調査結果
1:毛皮の生産方法を知っていましたか?
知らなかったと回答した人が52.9%と、半数を上回った。しかし、同じ動物の問題として社会的な運動が世界的に盛んとなっている化粧品の動物実験についての認知度は、30%と低く、日本国内で47.1%が知っていることは、高い数字であるとも言える。
2:毛皮とフェイクファーの見分けがつかない
毛皮とフェイクファーの見分けがつかないと回答した人は37.8%であり、近年のフェイクファーの精巧さが発展してきていることがわかる。街頭キャンペーンを行う際に聞いてみると、自分がつけている毛皮がフェイクファーだと思い込んでいる人も多く、より多くの人が毛皮とフェイクファーの見分けがつかなくなっていると予測している。
3:毛皮にされる動物がかわいそうだと思いますか?
「はい」と回答した人が61.20%、一方で「いいえ」と回答した人は9.7%で、動物が毛皮のために苦しむことに対しては同情的であった(図1)。
「ファストファッション(流行を取り入れながら低価格に抑えた商品)を購入する機会が多い」と回答した人(n=412)の中では、「はい」と回答した人が69%と一般より高い結果となった(図2)。
男女で比較すると、「はい」と回答した女性が60.4%、「はい」と回答した男性が46.3%
4:今後毛皮を購入しますか?
「どちらとも言えない」49.1%と最も多く、態度を決められないられない生活者または無関心層が多い。一方で「購入する」は8%であり、積極的に購入する生活者は少ない(図1)。さらに、この設問にでも、「ファストファッション(流行を取り入れながら低価格に抑えた商品)を購入する機会が多い」と回答した人(n=412)は、「購入しない」と回答した人が52.2%と高くなった。
5:毛皮のついた製品を好んで購入する
「毛皮のついた製品を好んで購入する」と回答した人は、1.8%と大変低い数字となった。
6:企業は、毛皮をフェイクファーで代用して商品を開発したほうがよいと思いますか?
「はい」と回答した人が49.6%とほぼ半数がフェイクファーで商品を開発したほうが良いと回答した(図1)。また、「ファストファッション(流行を取り入れながら低価格に抑えた商品)を購入する機会が多い」と回答した人(n=412)は、「はい」と回答した人が60.2%と高くなった。
以上