生きたまま毛をむしり取るダウンとフェザー
一般的に水鳥から採取される「ダウン」と「フェザー」ですが、多くは寝具やクッション、衣料などに使われています。この比較的安価に手に入るダウンとフェザーですが、どのような方法でとられているか、ご存じない方も多いのではないでしょうか?
先に、ダウンとフェザーの違いですが、ダウンとは「羽毛」、フェザーとは「羽根」のことをいいます。製品の用途や値段によって、混合の割合を変えて使われています。
ダウンとフェザーの最大の産地(輸出国)は中国とハンガリーです。
主にガチョウ(グース)やアヒル(ダック)などの水鳥の体から、マシーンプラッキング(鳥の死骸から機械でむしり取る)、ハンドプラッキング(鳥の死骸から手でむしり取る)、ライブハンドプラッキング(生きた鳥から手でむしり取る)という方法で採取します。
※プラッキングはピッキングとも呼ばれます。
© Four Paws
2012年調査
ライブハンドプラッキング(生きた鳥から手でむしり取る方法)
1~3.マシーンプラッキングと同様
4,生後12~14週間で1回目のプラッキングが行われます。これは、作業員が一羽一羽の鳥を押さえこみ、無理やり胸から腹にかけての羽毛をむしり取るというものです。
5.この後、屠殺工場に運ばれるまでのおよそ4~5年の間、約6週間おきにこのハンドプラッキング作業が繰り返されます。
6,羽毛を生産できなくなった鳥は、屠殺工場に運ばれ、フックに足を掛けて逆さに吊るされ、首の動脈を切られ血を抜かれて、プラッキングで最後の羽毛と羽根をむしられた後、ベルトコンベアーに乗せられ解体されていきます。
7,その後、食用もしくは飼料用として出荷されます。
※ ライブハンドプラッキングは手で行うといっても、商品であるダウンを傷つけないようにするためのもので、鳥の苦痛を配慮したものではまったくありません。
生きた鳥を仰向けにして首と足を押さえつけ、胸から腹にかけてのやわらかい羽毛を強引にむしり取るのですから、その際に鳥たちは「キーキー、ギャーギャー」と悲痛な叫び声をあげます。骨折や窒息をする鳥もあります。乱暴に羽毛をむしるために、鳥たちは皮膚が裂けるほどの傷を負い血を流すことがありますが、その治療法は無麻酔のまま太い針で縫いつけるといったひどく残酷な方法で、とても治療とはいえません。
作業員の手から離れた鳥たちは、一目散に逃げ出すか、ピクピクと痙攣しうずくまっています。胸元の羽毛をむしり取られた鳥たちは見るからに痛々しく、水の冷たさや寒さから身を守ることもできないでしょう。
この方法の残酷さが問題視されるにつれ、業界は、ダウン/フェザーの90%以上は食用の水鳥などの死骸から取ったものであると主張していますが、50~80%が、より儲かるという理由で生体からむしり取られたものだという推計もあります。
また、ハーベスティングといって自然に抜け落ちる羽毛のみを採取する方法もありますが、これでは安価で販売されているダウンジャケットなどの生産に追いつくわけがありません。
本来、ガチョウやアヒルに生えている羽毛や羽根は、厳しい寒さから鳥の身を守り、卵やヒナを温め保護するために親鳥が巣に敷き詰めるものです。温かくやわらかな羽毛は、人間の寝具や衣料になるために生えているわけではないのです。
この鳥たちは、本来はガチョウで20~40年、アヒルは10~20年と長命ですが、こうして飼育される鳥たちは、子供のために羽毛を使うこともなく人間に搾取され続け、その苦痛に満ちた短い一生を終えるのです。
マシーンプラッキング(鳥の死骸から機械でむしり取る方法)
肉や卵、フォアグラをとるため、まず水鳥の卵を温度管理された孵化機で大量に孵化させます。
食肉用の水鳥は生後1~3ヵ月くらい、フォアグラ用では4ヶ月足らず、採卵用の鳥はおよそ数年で、殺されるために屠殺場兼プラッキングの工場へ運ばれます。
工場に運ばれた鳥たちは、フックに足を掛けて逆さに吊るされ、首の動脈を切られて血を抜かれ殺された後、ベルトコンベアーでプラッキングマシーンという機械に運ばれます。
これは洗濯機のようなもので、回転するドラムに直径3cm長さ15cm位のゴムがたく
さんついており、それで羽毛と羽根をむしり取ります。
マシーンプラッキングは機械作業なので、羽毛と羽根に血や翼羽根等不必要なものが混じります。この血のついた羽毛と羽根の山は、洗浄工場へ運ばれ、粉塵を除去し、洗浄、殺菌、選別を行います。
羽毛と羽根を抜かれた鳥の身体は、食用/飼料用として出荷されます。
※ 実は、ダウン/フェザーの多くは、鳥肉やフォアグラ、卵などの生産業の副産物なのです。そして、こうした産業そのものがほとんどの場合、過密で監禁的な大量飼育を行なっています。ダウン・フェザーは虐待的飼育の副産物といえるでしょう。
福祉的なダウンはないのか?
ライブプラッキングによって得られたダウンは明らかに残酷です。さらにフォアグラや北京ダック用に強制給餌という虐待を受けた水鳥から得られたダウンもまた、残酷です。
ダウンにはResponsible Down Standard(RDS)認証という肉用に殺した水鳥から得たと証明するマークがありますが、これもまた、裏があります。動物保護団体の調査により、この認証を得た複数の生産農家が、実はライブプラッキングを行なっていたことが明らかにされたためです。
今、福祉的なダウンを得ること、それを証明することは不可能だと言われています。
日本のパタゴニアなどは、リサイクルダウンという方法を考え出しました。羽毛布団やダウンジャケットなどを回収し、それを洗浄するなどして再びもとのダウンに戻し、使うという方法です。すでに出回っているもののみを使うため、有限ではあると思われますが、多くのダウンが出回っている現在において、回収さえ多くできるようになれば、十分に賄えるはずです。
しかし、今の時代は動物性のものを使う必要性はありません。
羽毛のように軽くて暖かく、雨にも強いプリマロフト®や、3Mが開発したシンサレート™、クラボウのエアーフレイク®、三菱レイヨンのパフウォーム、東洋紡のグレンゲラン®などがあります。
とくにこれらの化学繊維は、100%リサイクルが可能です。回収しリサイクルすることができれば全く新品に生まれ変わることができます。化学繊維+リサイクルという選択が、最もエシカル(倫理的・人道的)であるといえるでしょう。
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[…] (参考写真:vegan fashion […]