毛皮農場を廃止することをG20で検討して!
アニマルウェルフェアとともに、公衆衛生のリスクをへらすために、9月に開かれるG20保健作業部会での議題に毛皮農場の廃止を含めるよう、私達アニマルライツセンターと動物実験の廃止を求める会は共同で要望書を出した。
毛皮農場を廃止しなくてはならない理由
2020年4月以降、欧米の430以上のミンク農場で新型コロナウイルス感染が確認された。人からミンクに感染り、ミンク農場で変異種が生まれ、オランダ、デンマーク、ポーランドではミンクから人に感染したことも確認されている。多くの宿主を経由すればするほど、強力な変異種が生まれる可能性が高まるが、一つのミンク農場に数千頭の動物がいる中で蔓延するのだからリスクは高いと言える。人の新型コロナウイルスは治療されるが、動物はそうではない。新型コロナウイルスによる人の死亡者数は2021年8月で430万人だが、動物は計2,000万頭にもおよぶ。しかもそのミンクたちは、死亡したのではなく殺された。そんな非人道的な事をした後でも、ミンク農場での感染の発生リスクは継続している。
いくつかの研究や報告書が毛皮農場の危険性を明確にしている。
- 世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)、世界動物保健機関(OIE)から共同で出された「毛皮農場で使われる動物における新型コロナウイルス:GLEWS+(早期警告システム)リスクアセスメント」では、米国やカナダ、リトアニア、ポーランド、スウェーデンで「ミンクの毛皮農場から全国レベルで人への新型コロナウイルスは級の可能性」が非常に可能性があるとされている。その他にも多くの国がその可能性があるとされた。
- 2021年7月に発表された論文(Pomorska-Mól et al,)では、ミンクに症状が出ないまま広がるため、「農場のミンクの大部分が数日以内に感染する可能性があり、それが農場労働者や獣医師に大きなウイルス曝露をもたらす可能性がある」。「ミンク農場でのミンクの感染規模は憂慮すべきものである。その主な理由は、ウイルスが感受性の高い動物の大集団を通過する能力を持ち、新たな危険な変異の出現や新たな生物学的特性の獲得を可能にする可能性があるからである。」という。結論として、この論文は「ミンク農場は、危険で常に認識されているとは限らないSARS-CoV-2の温床である可能性がある。」と述べている。*2
- デンマークの毛皮農場では、感染が拡大した後ミンクの体内で抗体ができたが、その後3ヶ月も経たないうちに再度感染が起き、検査した動物の75%以上の動物が影響を受けていたという。ウイルスは新しい形に次々と変異している。*3
- デンマーク国立血清研究所(SSI)は、2020年11月29日までに少なくとも4,000件のミンク変異種のヒト感染例が登録されていることをこの6月に発表し、ミンク変異種の感染が人の間でも広まっていっていることを示した。今後ミンクを介してどのような変異種が発生するかは評価不能だとしている。*4
今回の新型コロナウイルスに限った話ではない
動物を集約的に飼育し続ける限り、次の新たなウイルスの脅威と隣合わせである。
2002年に発生したSARS-Cov-1の中間宿主はラクーンドッグ(タヌキ)であったとも言われている*5。ラクーンドッグは中国で多く毛皮農場で集約的に飼育され、現在ではヨーロッパでも毛皮農場で飼育されている動物だ。
幸いなことに、日本の集約的毛皮農場は2016年を最後になくなった。しかし、日本は今でも約60万頭分の動物の毛皮を輸入している。衣類だけでなく、マフラーや手袋、ピアスやサンダル、バッグなどの形で多くの人や企業が未だにこの産業を支援している。
日本企業は、実際には動物の毛皮をほとんどなくしていても、いつか需要が盛り上がるときのためにファーフリーを宣言しない企業が多い。態度を明確にせず、沈黙することは、残酷でかつ危険な毛皮農場を支援することにほかならない。
そろそろ日本企業もはっきりとリアルファーにNOを示してほしいと切に願う。
毛皮に反対する国際連盟ファーフリーアライアンスは、リアルファー=動物の毛皮をゼロにするための国際署名運動を行っており、すでに60万筆の署名が集まっている。リアルファーを巡っては、半世紀も前から世界中で廃止運動が繰り広げられ、欧米各国だけでなく、日本でも毛皮輸入量が15年前と比べて95%削減されるなど、この素材の終焉が着々と近づいている。新型コロナウイルスは、この流れを一気に加速するだろう、というか、しなくてはならないことに、いい加減気が付かなくてはならない。問題があるとわかったものは早急に、そして根本的になくしたり改善しなくては、次の100年を人は穏やかには生きていけないのだ。
G20に出席する日本政府には、毛皮農場のリスク認識し、毛皮農場をいち早く国内からなくした国として、世界中で毛皮農場をなくすためのリーダーシップをとってほしいと願う。
1https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-fur-farming-risk-assessment-2021.1
*2 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1751731121001142
*3 https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.05.07.443055v1.full
4 https://www.ssi.dk/-/media/arkiv/subsites/covid19/risikovurderinger/sundhedsfaglig-vurdering-af-risiko-for-den-humane-sundhed-ved-en-evt-genoptagelse-af-minkhold-efter.pdf
*5 https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/12/20-3733_article